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星の動く音がうるさい

2016年からニート状態。独房の中のように過ごしたい。焦燥感がひどいな

憲法9条は欺瞞か

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「The Red Shirts’ Last Stand」Corentin Fohlen

 

憲法9条を支持しようとするときに、支持の態度によっては欺瞞になる。

 

結論だけいうと、欺瞞を回避するためには、「自衛隊を否定する」、「解釈改憲だという理由で安部政権を批判しない」のどちらかを採用する必要がある。

もう少し詳しく言えば、欺瞞に陥らずに9条を守ろうとするのなら、「ガンジーのような非暴力抵抗を採用した上で、自衛隊の存在を否定せよ」という絶対的平和主義か、「安部政権のような改憲派解釈改憲だという理由で批判する資格はないので、自らの依拠する正義構想を提示しながら批判せよ」という消極的正戦論のどちらかを採用することになる。

絶対的平和主義における原理主義護憲派

いかなる戦争も許されない、という立場を絶対的平和主義という。

憲法9条の解釈の一つに、「自衛隊を保持してはいけないし、いかなる戦争も許されないから、自衛のための戦争も許されない」という立場がある。

これは、「いかなる戦争も許されないから、不正な暴力に対しても、武力行使によって抵抗してはいけない」という絶対的平和主義の立場に依拠する。
したがって、不正な暴力に対しては、ガンジーのような、非暴力による抵抗闘争に徹するという潔癖な道徳的厳格性を持つ。


この立場は、自衛隊の存在を否定しているので、そこからは当然、「自衛隊の存在は違憲だから、ただちに廃止せよ」という主張が出る。この主張を採用しない場合、理論的には自衛隊の存在を否定しているのにもかかわらず、何かの事情によって、その本音を出すことができていないということなので、欺瞞といえる。


法哲学者の井上達夫はここから引き伸ばして、おもでづらだけは「自衛隊を廃止せよ」と言ってる連中も、もろもろの発言を見てみれば、「じつは自衛隊がいてくれたほうが便益があるので、非武装中立を信じているふりをしましょう」と違憲状態の固定化を望んでいるとして、これが憲法論争における最大の欺瞞として断罪している。

消極的正戦論における修正主義的護憲派

「正しい理由があれば戦争してもいいが、その正しい戦争というのは侵略に対する自衛戦争のみに限られる」という立場を消極的正戦論という。
憲法9条の解釈の一つに、自衛のための戦争は許されるという立場がある。きっと、この路線を採る人たちが多いんじゃないかな。


この立場の一部の人達が、安部政権の集団的自衛権肯定論を批判するときに、「それは解釈改憲だ」と言って批判するけど、これが欺瞞になる。
というのも自衛のための戦争は許されるという解釈自体、旧来の内閣法制局見解と同じなので、これも解釈改憲の一つに過ぎない。


したがって、解釈改憲だと言っても跳ね返ってきて無効になるので、批判するんだったら、専守防衛の有効性を示さないといけない。こちらは簡単に実行できそう。

 

『世界正義論』p.274-330参照。9条については直接書かれていないけど、憲法論争にこれを適用してみた。

 

本論とは直接関係ないけど、井上達夫は、消極的正戦論を、「自衛戦争のみ許されるという立場」としてp.286で定義しているのに、あとになって、大量虐殺を防ぐ人道的介入を肯定しているので、この定義自体に反しているように見えて、混乱した。よくよく読んでみれば、政治的目的を実現する手段として、戦争を選ぶことはできるだけ避ける(彼の言葉で言えば、戦争を非手段化する)、という趣旨なので、私が5文字つけくわえて定義しなおすとすれば、消極的正戦論とは「「基本的には」自衛戦争のみ許されるという立場」とする。

 

大学生のとき、憲法の授業を何個か受けたけど、9条を支持する教授が多かったな。
こんなに堂々と支持しちゃうの!?って人もいれば、ひそかに気持ちをこめてる人もいた。

国際政治学における憲法9条の孤立性

国際政治学の観点から、9条はどう評価できるのか、考えてみた。これは本を参照してないから、間違ってる可能性が高い。

 

日本は常に超越している。
日露戦争の後には、国際社会において帝国主義的なイデオロギーは退潮していったのに、日本は植民地支配を拡大しようとした。
第一次世界大戦の後には、軍縮と相互不干渉による平和主義が、パリ不戦条約によって表現された一方で、日本は満州事変を起こした。
第二次世界大戦の後には、実力なき理念が、軍国主義の拡大を許した反省から、結束して侵略を阻止しようとする現実主義を、国連の存在に集約した一方で、日本は一国平和主義を宣言した。
日本は常に国際潮流から超越している。


オバマにしろトランプにしろ、モンロー主義の再現みたいに、引きこもろうとして、EUは移民問題で揺れていて、中東はテロの温床になってる。自分の国に手がいっぱいなところが増えてきて、不安定な地域が増えてる。兵士を死なせるのは他の国にやってもらって、日本は、紛争を解決する実力があったとしても、安全な地域で、医療やインフラの投資に専念してきたけど、だんだん派兵する国も少なくなってきて、空洞化している。諸国家で結束して侵略やテロを阻止しようとする現実主義が、いまだに国際潮流なのだとしたら、日本は超越している。

 

世界の人達が、今何に価値を置いているかによって、9条の価値は揺れ動くのか、あるいはマヌ法典のように神聖に完結して、世界は弾き出されているのか。

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